#研究レポート 「東北をおもしろくする」

2020.02.18

「東北をおもしろくする。」を行動原則として船出した東北6県研究所「ロッケン」。私たちの思いやアプローチをお見立て会でのプレゼンテーションを一部抜粋しながら紹介します。

「ただしさ」よりも「おもしろさ」

「おもしろい」。何気なく使われる言葉ですが、その中身は実に多様です。日本語だと「心惹かれる」「普通とは違う」「笑いが止まらない」。英訳すると「funny(ゲラゲラ笑う)」「interesting(興味深い)」「amusing(愉快)」。ちなみに「おもしろい」の語源は「目の前が開けて、パッと明るくなるさま」なんだそうです。

ロッケンの活動の目指す先を考えたとき、私たちはこの「おもしろい」という言葉に辿り着きました。東北で暮らすみんなが笑顔になるような、東北に多くの人が興味や関心を持つような、東北の資源や価値をより多くの人が享受できるような、多様なアイデアをカタチにして、東北の明日やその先を拓いていく。
あらゆるものが数値化されて、「バッファ=あそび」のような部分がますます減っている。「ただしさ」が重んじられるのは仕方ないけれど、そればかりじゃつまらない。ひとつの答えにとらわれず、みんながおもしろくなる様々な答えを出し続ける集団。それがロッケンです。

前提を疑う、常識を壊す、とおもしろくなる。

今、様々な企業が過去にとらわれず新しい価値づくりにチャレンジしている。「ふつう、魚は鮮度が命だけど、マグロの場合は時間を経過させたほうがうまくなる、という事実を大学と発見して商品化する」「これまでは、健康を計測する企業だったけど、健康をつくる企業に進化する」。こういった動きは一般の生活者の間でも広がっています。「もともとは、脱ぎ履きしやすく滑らない調理師用靴の性能に目を付けた妊婦の方が、こぞってその靴を履き始める」。私たちは、このような今ある前提や常識をおもしろがって疑う、壊すことを意図的に作り出していきたいと考えています。
たとえば先ほどのマグロを例にすると…
鮮魚の「鮮度と味」の前提的・常識的な基準や関係性を4象限で区切ってみる。

これまでの常識では新鮮だとうまい、古いと不味い。しかし私たちが注目するのはその隣に広がるスペースです。

鮮魚は新鮮がうまい、という常識に対して鮮魚は時間がたつほどうまくなるかも、という仮説を立てて立証したり、具体化していくことにより、今ある東北のリソースの価値や可能性を拡げていきます。

東北が世の中をおもしろくできる“3つの風”

「前提を疑い、常識を壊して、東北をおもしろくする」。簡単なことではありません。ですが、ロッケンは「東北は、それがつくりやすい環境にある」と考えています。

新しい成長観「THRIVE」
ロッケンの外部アドバイザー手塚氏の著述の引用ですが、一般的に「成長」を表す英語「GROW」は「GREEN」を語源とし、植物が生い茂って緑が上に向かって増えていく「量的増大としての成長」を表しているとされています。対して成長を表す英語には「THRIVE」という言葉もある。これは古代ノルド語の「積み重なるように増える、すくすく育つ、土地に根付く」といった意味を持つ言葉が語源とされ「質的拡張としての成長」を表しているとされています。私たちはこの「THRIVE」にこそ、「東北がおもしろくなる」ポイントがあると考えます。たとえば持続可能社会、SDGsに象徴される未来志向の成長観は「THRIVE」そのものであり、経済成長のような量的増大とは一線を画すものです。また「結の精神」「自然との共生」「伝統文化の継承」を尊ぶ東北の人々に受け継がれる持続的な価値観とも重なり合います。これまで是とされてきた経済的・物質的視点での成長とは異なる新しい成長観「THRIVE」が根付く東北だからこそ、「おもしろい」何かが生まれるはずです。

「別解」は辺境から生まれる。
これまで東北は、都を正解とし、都を中心と見たときの端っこ、つまり「辺境」として扱われてきたように思います。しかし私たちは思います。辺境=サブストリームだったからこそ、様々な価値が手つかずで残っているし、メインストリーマーのように既得権益に縛られることもなく、自由にアイデアを紡げるのではないか。少し調べてみても、前提を疑い、常識を壊したアウトプット(=新しくおもしろい常識)は世界の真ん中から生み出されているとは限りません。たとえば、ファストファッション。高価でオシャレという価値に対して低価格なのにおしゃれという価値が北欧から生まれたり、みんなで1台の車を所有する「カーシェアリング」という試みがスイスで生まれたりしたのも、その表れといえます。
今年、私たちのグループ会社である博報堂は「正解より別解」というブランドメッセージを掲げました。正解は過去を基準として無難で安心できるもの。「別解」は未来を基準としてどうなるか分からないけどワクワクするもの。正解はひとつかもしれないけれど、「別解」なら無限にあり得る。前提を疑い、常識を壊す私たちの試み、そしてファストファッションやカーシェアリングなどは「別解」の実例ともいえます。「別解」は辺境から生まれる。東北からだって世の中の新しいスタンダードを紡げるはずだし、東北がそんな新しい答えを次々と生み出す真ん中になれると確信しています。

東北ダイバーシティ
もともと歴史的・地形的に見ても東北は単一ではないですし、6つでもない。もっと細かく分かれている。そんな多様性を誇ってきた東北に、インバウンドや移住定住が増えることで外の知見が加わり、多様性の幅や深さはさらに増しています。伝統工芸の新しい価値を模索したり、地場産品を原材料とした新たな名物を開発したり、東北中にそのような動きが広まっています。

「新しい成長観“THRIVE”」「『別解』は辺境からうまれる」「東北ダイバーシティ」を背景に、前提を疑い、常識を壊しながら、ただしさよりもおもしろさを追い求める。東北に存在するあらゆるリソースの価値や可能性を拡げる。そして東北をおもしろくするコンテンツやアクションをつくっていきたいと考えます。
どうぞ、ロッケンにご期待ください。

writer:加勇田亮二