#ロッケントーク: vol.3 新聞を読まない大学生とこれからの地方紙の可能性を探ってみた

2019.11.08

 

若者の新聞離れを、いかに食い止めるか。それは中央紙のみならず地方紙にもあてはまる大きな課題です。日本新聞協会が発表している日本の新聞発行部数によると、2018年は約3990万部。マスメディアとして大きな数字を維持してはいるものの、これまで新たな購読者として期待されていた大学生や新社会人もスマホでの情報取得が当たり前となり、新聞紙面以外の関係構築が急務な状況です。しかし、そのような中で、ラグビーワールドカップの日本vsスコットランド戦を報じたガーディアン紙(英国)の記事が、客観性を持ちながら詩的で美しい文章であると話題となり、新聞には人の心を動かすチカラのあることを改めて感じさせる出来事がありました。また、新聞社がハブとなり、地域の人や企業をつなぎ、新たな事業を展開する動きも東北の中で起きてきています。今回のトークでは、若者と新聞との関係性を深掘りする中で、これからの未来において新聞や新聞社が東北にとってどのような価値をもたらすことができるのか、その可能性についてトークを繰り広げました。

<今回のトークメンバー>
名前(学年)
写真左から
かなめ(4年)
なお(4年)
かなた(4年)
よしき(4年)
<インタビュー>
武田陽介

実家では読んでいた新聞も今は縁遠くなったと話すかなた君

読んでいないようで読んでいる!?情報ソース化する新聞

―答えはなんとなく見えてはいるんだけど、念のため質問します。みんな、新聞読んでる?
かなめ:
読んでいないです。実家でも新聞をとっていなかったので、新聞を読む習慣そのものがないんです。
なお:
私も、読んでないです。情報量が多すぎて自分には無理だなってあきらめちゃう。続かないって思っちゃう。
かなた:
読んでないです。家で購読していたので読んでいた時もありますが、いまは、情報収集はだいたいスマホですね。
よしき:
読んでいないです。お金がかかるし、読みたい記事を探すのが面倒なので、ニュースはスマホで読んじゃいますね。あと、大学で読むと、引かれるっていう感覚あるよね?
かなめ:
わかる!これは若者の共通認識なんじゃないかな。
なお:
うん、わかる!家じゃなくて、わざわざ学校で読む必要ある?意識高いアピールをしているのかな?って思っちゃいます。

―もはや、単に新聞から離れてるっていうより意識的に離れている感じさえあるね…。だとしたら、世の中の動きやニュースとか気になる情報は、どんなメディアから入手してるの?
かなた:
僕の場合、Twitter、NewsPicks、スマートニュースです。
よしき:
僕は、メインはスマートニュース。新しいテクノロジーのトピックスとか、設定で自分に必要なニッチな記事をまとめてくれるのがいいですね。あとはTwitterをよく使います。一番情報が早いし、他人との会話のネタになることが多いので。
かなめ:
僕は、NewsPicksがほとんどです。Twitterで芸能人が結婚したとか、そういうトピックスは見ますが、自分が読みたい記事はNewsPicksに集約されている気がしますね。あと、わりとテレビは観ます。情報を得るためっていうより、音が無い空間が寂しいのでつけているって感じですが。
なお:
私も基本的には一緒かも。NewsPicksで能動的に情報を得ています。テレビとかLINEニュースで受動的に情報に触れる時もあるけど。ネットやアプリのニュースだと、誰かのコメントが見れたり、どのぐらい注目・拡散されているかひと目でわかるのがいいですよね。

-基本はアプリなんだね。でも、きっとみんなが見ているアプリのニュースも、その情報ソースが実は新聞社の記事だってことが往々にしてある。つまり、新聞記事を新聞紙面で読まなくなっただけで、情報としては日々接触していると言っても過言ではないのかも。
4人:
たしかに。
かなた:
あまり意識したことがないですが、知らないうちに読んでるんですね。

-それと、ニュースやトピックスの「いいね」の数とかコメントって、ついつい見ちゃうよね。自分以外の読者がどのぐらい興味を持っていて、どんな感想を抱いているのか可視化されているのは面白いし、その機能って、新聞紙面にはないもんね。
よしき:
確かに、コメントがたくさんついてると、世の中の関心が高いなとか、これは読んでおかなきゃ!とか思いますね。
なお:
記事と合わせてコメントを読むことで、視野がひろがって、自分の認識を捉え直すことができるんですよね。
よしき:
でも、コメントによってニュースの受け取り方が変わってしまう場合もあるので、それをどう解釈するかちゃんと自分の中に判断軸を持っておかないと考えがブレそうで怖いなっても思います。
かなた:
そうそう。だから、自分の考えをまとめたい場合は、第三者の意見にひっぱられないようにコメントは見ないようにする時もあります。

記事についているコメントの数が読む指標になることもあると話すよしき君

地域の情報、誰に、どう届ける?

-情報を一元的に捉えるんじゃなく、他の読者や有識者のコメントを見たり、世の中の人がどれだけ反応しているのかというトピックス周辺の状況も含めて、立体的に情報を取得するのがいまの時代のスタンダードなのかもしれないね。みんなが触れている情報って、東京発信のニュースが多いような気がするんだけど?大きな世の中の動きさえ知れば満足なのかな?地域の情報を得たいという欲求はない?
かなめ:
飲食店とか、話題のカフェとか、そういう情報が知りたい時は、新聞というよりタウン誌を読んでますね。
よしき:
地域のニュースのことが気になる時は、僕はテレビを観ますね。
かなた:
僕は秋田出身で、地元のことが気になるので秋田魁新報のLINEニュースを読んでます。

-なるほど。今住んでいる場所ではなく、地元や関心のあるエリアの細かい情報は地方紙じゃないとなかなか追い切れないよね。就職でUターンを希望する学生向けに地元の新聞社が地元企業や地元の話題をキュレーションして配信するサービスとかあれば需要ありそうな気がするなぁ。あと、経営者がどんな記事を読んでいるのかわかったりすると、その企業の方向性が見えてきたりして就活に役立ちそうな気もするね。
かなめ:
そうですね。でも、新聞紙面での展開だといい記事でも読む可能性は低いかと思います…。

地元のニュースを定期的に読んでいると話すかなめ君

―でも、見出しを眺めるだけで国際情勢から地域の小さな動きまで3分もあれば把握できちゃうメディアってそうそうあるもんじゃない。こういう手軽さ以外に新聞のいいところをあげるとしたら、何がある?
かなめ:
新聞は、自分の関心がない情報に出会えるのはプラスかも知れませんね。アプリだと、関心のあるものだけをレコメンしてくるので。

-なるほど!データ化の時代、レコメンドやリターゲティングで自分の好みや興味のあるもの以外の情報に出会いにくいもんね。そのことを逆手にとって、普段触れないような情報が知れるっていうのは新聞のよい点かもしれないね。これはジャストアイディアでしかないけど、東北に旅行に来た観光客に温泉旅館の女将の視点でいくつか朝刊の記事をレコメンドしてもらう「女将Picks」とか、新幹線や飛行機の機内誌のように観光バスで配布するとか、“一期一紙”をコンセプトに地元の話題も観光資源として活用できるんじゃないかな。
他には、どんなポジティブ要素が考えられる?
よしき:
信頼感ですかね。信憑性の高い情報を提供してくれるっていう意味だと新聞はいいのかも知れません。レポートのエビデンスとしても活用できるし。
なお:
確かに、ネットのニュースに比べると、信頼できるっていうのはあります!

新聞は信頼できるメディアと話すなおさん

確からしさを武器に
紙面に頼らない地域との共創を

―信頼感かぁ。それは当たり前のようなことかもしれないけど、情報過多でデマや誤報、パクリなどネットには信じられない情報があふれているからこそ、新聞の信憑性が際立つのかもしれない。その“信頼”というものと関係する海外の動きがあって、アメリカでは廃刊になった新聞がNPOによって再建される動きが起きていて、政治や経済に特化した新聞を発行しているとのこと。それは、企業・行政の暴走を監視する“社会の目”として新聞が機能しているから。それと同じように犯罪を防ぐ、防犯の役割を新聞が担っていると某新聞社の人に聞いたこともある。つまり、新聞というメディアは個人に情報を届けるという以外に、世の中の抑止力になっている。これは地方の新聞社が生き残るうえでも、とても大事な観点だと思う。
もし、信頼できる情報ソースとして今まで以上に様々なメディアに転用されていくとしたら、東北の魅力を全国に発信する機会は拡大する可能性があるだろうし、紙面という枠組みにとらわれない役割や動きがポイントにもなるかもしれない。すでに、福島民報が地元出身のクリエイティブディレクターと音楽フェスを開催していたり、河北新報が地元の企業と連携し、未来人材を育成する「power of innovation」という課外授業を実施していたり。地元の新聞社が厳選した商品を販売するeコマース「47CULB」など、地域を盛り上げる様々な事業のハブとして東北の新聞社がアクションを展開している。そのような動きがどんどん盛んになり、加速していけば、地方紙の価値や存在意義は今まで以上に大きなものになる可能性はありそうだね。みんな、今日はありがとう。お疲れ様でした。

 

writer:武田陽介