ロッケン的デザインスコープ「海水浴のデザイン」篇

2023.08.04

東北でイチオシの海水浴場で、その発展形について考えてみた

◎日本海の海水浴場が楽しい!

突然ですが海水浴、毎年していますか? 私が東北に来て感動したひとつが日本海側の海水浴場なのです。基本、夏の波は穏やかだし、適度なお客さんの数ですし、岩場もあれば砂浜も楽しめる。昭和レトロの懐かしい海の家も多く、海水浴場としては最高!の場所がたくさんあるじゃないですか。中でも私のイチオシが山形県鶴岡市にある由良(ゆら)海水浴場。ここは倅といっしょに毎年通ったところで楽しい思い出ばかり。先ず遠浅できれいな水と砂浜、すぐ脇にある赤い橋で結ばれている白山島に渡れば、ちょっとした探検家気分になれること、海洋釣堀、磯遊び、おいしい海鮮焼、近くにあるクラゲ展示で有名な加茂水族館に立ち寄って、由良温泉に入って帰る。一石何鳥というくらい楽しさがギュッとコンパクトに詰まっている場所なのです。

由良海水浴場の私のベストアングル

ここが白山島への冒険の入り口だ 島までは徒歩約2分、あっという間に別世界

海水浴場としてはちょうどいいサイズ 「日本の渚100選」や「日本の快水浴場100選」にも選ばれている
(写真:ゆらまちっく戦略会議)

江戸時代にはすでに「潮湯治」(しおとうじ)という言葉があったようで、海水浴のルーツは健康増進や症状改善に役立てようというコンセプトがあった。皆さんもよくご存知の海水浴の効果・効能は、免疫力のアップ、皮膚トラブルの症状改善、花粉症や血流の改善、「1/fゆらぎ」という音波・波のリズムによるリラックス効果などが代表的。太陽の光、紫外線を適度に浴びることに注意は必要だが、海水、潮風、砂浜というものは人間の体にとてもいいことずくめなのである。ならばレジャーとして夏だけの習慣にするのはもったいない。一年中みんなが楽しめる海水浴の新しいデザインの可能性はないだろうか。いよいよ東北も各地で海開き、今回のロッケン的デザイン視点で探ってみたいと思う。

◎由良の未来に奮闘中

いまもあの海水浴場は毎夏賑わっているのだろうか。15年ぶりに訪れ、由良温泉観光協会・副会長の本間義彦さんにお話しを伺ってみることにした。この地で60年以上続く「温泉民宿本間義一」(ほんまぎいち)を営んでいらっしゃる方だ。夏の海水浴客はもちろん、一年を通じで全国から太公望が訪れ、旨い魚を知り尽くしている魚匠のいる人気の宿だ。「この海水浴場の魅力は何といっても白山島にある」と本間さんは力説する。島のおかげで魚が集まるし、夏は風除けとなって、他の海水浴場が遊泳禁止になってもここは可能なことも多いという。また冬は冬でこの白山島と海底の地形のおかげで良い波が立つタイミングがあって、サーファーに人気のスポットらしい。ただ「ちょうどいい日帰り旅行エリア」として選ばれたことで、宿泊客が少ないのが課題だと指摘された。当然この地にも人口減少、空き家、人手不足の波は押し寄せているが、数年前より観光協会や自治会、漁協、地域協議会「ゆらまちっく戦略会議」などがタッグを組んで地域の活性化に取り組んでいる。例えばこのエリアは鯛が安定的に水揚げされる漁場である特徴に目を付け、「ゆらまちっく海鮮レディース」が中心となって「小鯛だし」「鯛だし醤油」「鯛だし味噌」鯛だしが麺に練り込まれた「八乙女うどん」など、精力的に地域ブランド商品を開発、その評判は徐々に上がってきているという。

白山島への橋を渡ると左側に海洋釣堀が見えてくる 竿、餌、仕掛けの持ち込みはNG、つまり手ぶらで楽しめる

この海洋釣堀の大人料金は¥1,200、子供(中学生以下)¥600で、9時から17時まで楽しめる しかも釣った魚は自由に持ち帰ってOKだ
(写真:ゆらまちっく戦略会議)

取材当日の朝、白山島のあちこちの岩から、鮮やかなオレンジの岩ゆりが咲いていた 夕陽とのセッションも美しいにちがいない

◎デザインがひろがっていく

取材を終えて真っ先に閃いたことが三つある。一つ目は「朝市」ができそうな海に面したとても広い駐車場があることだ。東北には国内最大級、青森県八戸市の「館鼻岸壁朝市」(たてはながんぺきあさいち)や、岩手県雫石町の「元祖しずくいし軽トラ市」などがある。その土地ならではの美味しいものを味わえるのはもちろんだが、日用雑貨や衣料品も交じってカオス。中でもおいしそうなお惣菜の数々には目を引かれ、お店の方から、いろんな食べ方があることを教えてもらえる。その場所には発見がいっぱいあって楽しくてしょうがない。さながら、「市」は地域住民によるプレゼンテーションの集合ともいえる。どのお店の人も私には半分わからない方言で、おかまいなしに矢継ぎ早にプレゼンしてくる。このコミュニケーションが観光客にとっての醍醐味だったりするのだ。「観光客・交流人口を増やす」には、先ず地元の積極的なプレゼンがあることが大前提であると、つくづく感じる瞬間である。地元の人に会いに行くことだって立派な観光の目的になるからだ。「由良の海人浴」なんていう朝市のネーミングにして、ここで地元の方とどっぷり話をしてみたい。

二つ目は、白山島の存在だ。欧米などのリゾート地は海のレジャーを楽しむだけではなく、パラソルの下のゆったりとしたチェアで、心地よい潮風の恵を体に吸収しながら読書をしている人が多い。まさに「大人の海水浴」といった印象だ。そう、これを白山島でやってみたいと感じたのだ。皆さんも「島に行く」とは、どこか「探検に行く」気分になっていないだろうか。例えば「白山島で知の探検」というコンセプトで、読書の島というアイデアはどうだろう。今日はこの1冊をまるごと読破すると決めて白山島に渡るのだ。パラソルやチェアだけではなく、テントのような施設や、カフェといった飲食も必要になってくるし、冬季は閉鎖で3シーズン限定ということにはなってしまいそうだ。でも白山島を読書の聖地にしたことで、将来この島から文豪が誕生したら、「白山島文学」として新しい会派が生まれるかもしれない。「海の読書浴」というポジションでこの島を有名にしてみたい。

そして三つ目がおもしろい。あの出羽三山(同じ山形県鶴岡市)にとってこの由良が、歴史上重要な場所であるというのだ。本間さんいわく、今から約1400年前、蜂子皇子(はちこのおうじ)が京都の由良(現在の丹後由良海岸)から海路で北へ向かっているとき、この地で8人の美しい乙女が笛を吹き、舞いながら皇子を招き入れた。その場所(海に面した洞窟)は八乙女浦と名付けられ、洞窟の先は羽黒山頂の神の井戸とつながっていた。上陸した皇子は、3本足の八咫烏(やたがらす)に導かれて羽黒山に赴き、難行苦行を積んで羽黒権現を感得、山頂に社を創建したのが伝説として残っている。つまり由良という地名は、京都の由良とつながっていて、さらに言えば出羽三山の開祖である蜂子皇子上陸の地なのである。この伝説はもっとふくらませた方がいいし可能性に満ちている。伊勢神宮の正しいと言われている(古来の)参拝ルートをご存知だろうか。外宮(げくう)や内宮(ないくう)の前に、先ず伊勢の二見ケ浦にある夫婦岩を拝み、二見輿玉神社(ふたみおきたまじんじゃ)でお祓いを済ませるのだ。つまり最初に海水で身を清めるのである。これと同様に、出羽三山参拝ルートのスタートの地が由良であってほしいのだ。ルートや標識、道標を整備することは時間がかかっても実現してほしいが、先ずはこの事実を少しでも多くの人に知ってもらいたい。

由良海岸に今年の3月に設置された、出羽三山の開祖を伝える蜂子皇子物語と八乙女伝説の解説パネル この話をもっとたくさんの人に知ってほしいのだ

いかがでしょう? もう何も言うことがありません 2023年の海開きは7月15日(土)~8月16日(火)の予定

定置網体験や地曳網漁体験は、小学生の体験学習として随時受け入れている またスルメとタコ糸で磯ガニをねらう磯遊び(写真右端)は、ルールをきちんと守った子供には、「磯ガニ釣り師」の資格者と認定され、オリジナル缶バッジがもらえる 
(写真:ゆらまちっく戦略会議/庄交コーポレーション)

出羽三山とは、羽黒山(はぐろさん)を現在の山、月山(がっさん)を過去の山、湯殿山(ゆどのさん)を未来の山として、これを巡ることが「生まれかわりの旅」と称され、身も心もリセットされるという信仰だ。この普遍的で世界共通の願いが、いま国内外に人気の理由だと思う。いたってシンプルなアイデアだが、例えば「由良羽黒山・生まれかわりマラソン」なんてどうだろう。「生まれかわれる」かもしれないという、とても希望に満ちた精神的な付加価値のあるマラソン大会だ。サイクリングやトレッキングでもいいだろう。開催を実現できれば自ずと伝説は伝わっていくだろうし、由良海岸の「海気浴」と羽黒山の「森林浴」を同時に楽しめるところも売りになるはずだ。

日本のインバウンド増を考えるとき、「文化観光」だけでなく「自然観光」をどう充実させるかも重要なポイントだ。ここにテコ入れをしようと、従来の「グリーンツーリズム」や「エコツーリズム」よりも経済効果の高い「アドベンチャーツーリズム」がいま注目されている。 「由良羽黒山・生まれかわりマラソン」のアイデアはまさにこの期待のジャンルだ。今年の9月には世界各地から観光関連業者らが集まるサミットが、アジアで初めて北海道での開催が予定されている。日本人は海に囲まれた島国で古くから海との共生を果たしてきた。海水浴の新しいデザインは、海の達人として豊かな海洋資源を健康や観光に活かす知恵をもっと発揮していく発想や行動のプロセスにある。

ロッケンは、「東北をもっとおもしろくする」活動をひろげています。もちろん今回のテーマである東北の海水浴の魅力や価値の創造についても、再発見をしながら盛り上げていきたいのです。どなたかこんな野望をいっしょに取り組んでみませんか? 

                               東北6県研究所 研究員 岡本有弘

白山島と夕陽のコントラストは、「一生に一度は見ておくべき東北」の個人的なリストにノミネート決定だ (写真:庄交コーポレーション)

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◎取材撮影、写真協力

  • 由良温泉観光協会 副会長 本間義彦様 山形県鶴岡市由良2丁目14-55 TEL/FAX : 0235-73-2250

E-mail: yuraonsen@gmail.com  ※詳しくは公式ホームページをご確認ください。

  • 温泉民宿 本間義一 山形県鶴岡市由良2丁目3-24 TEL : 0235-73-2552  FAX : 0235-73-2580
  • 株式会社庄交コーポレーション アド事業部 執行役員 加藤留美子様 山形県鶴岡市錦町2-60

TEL : 0235-22-3777  FAX : 0235-22-5289 https://www.shoko-corpo.jp/ad/

◎近隣の観光お問合せ先

◆鶴岡市観光案内所 山形県鶴岡市末広町3-1 マリカ東館1階  TEL : 0235-25-7678

https://www.tsuruokakanko.com/spot/2861  ※詳しくはホームページをご確認ください。

(上記は2023年7月時点の情報です)