【ストーリー】部カフェ

2020.09.24

架空の漫才コンビ「みちのく二人旅」が未来の働き方を語ります。

ツ⇒ツッコミ ボ⇒ボケ

ツ:世間では、リモートワークがだいぶ普及しまして。

ボ:しましたね。会社に行かないで、
家とか会社外で仕事するってやつですね。

ツ:とくに若い会社員とかは、
「必要以上のお願いされることが減った」とか
「仕事がはかどる」
「プライベートと仕事をうまく両立できる」って
好意的な意見が多いんですよね。

ボ:ぼくも願わくばリモートで漫才したいですよ!

ツ:どうしたんだよ!急に

ボ:毎回毎回、このセンターマイクの前に集合してさ

ツ:ちょっとまて、38(サンパチ)マイクを
待ち合わせ場所みたいに言うな

ボ:必要以上にボケさせられて

ツ:それがお前の仕事だろ

ボ:しゃべってたら横でチャチャ入れられて

ツ:ツッコんでんだよ!おれの仕事だ、それは!

ボ:だからもう、リモートで漫才したい。

ツ:いや、漫才は面と向かって会話してナンボなんだからさ…

ボ:(割り込んで)あれ?電波が悪いですね?もしもーし!

ツ:遮るんじゃねえよ!

ボ:面倒なことは全部電波のせいにして逃げられますから、
便利ですよね~テクノロジーって

ツ:皮肉を言ってんじゃねえよ!
まあ、たしかにコイツみたいに、
若い人ほど距離を置きたいみたいですけどね。
一方、管理職の人の声を抽出すると
「部下とのコミュニケーションが無くて寂しい」
っていう声も実際あるんですよ

ボ:確かに、今管理職クラスの人たちは
「飲みニケーション」とか活発にやってただろうからね

ツ:休日には、ゴルフ場に行ったり
部のメンバーを家に招いてバーベキューしたりとかね
昔は、公私で交流を深めることで
いい仕事できるって考えだったけど、
今はだんだん、公私を使い分けて効率的に仕事しようってことなんだろうね。

ボ:しかもさ、今リモートワークでオフィスが縮小してるじゃない?
前みたいに部の机の島がなくなってるから、
なおさら殺風景に感じるだろうね。

ツ:確かにね

ボ:だからさ、そんな寂しい管理職の人たち向けの
サービスをやったらいいと思うんですよ。

ツ;どんなの?

ボ:【部カフェ】つって

ツ:【部カフェ】?

ボ:接客してくれる店員が全員、自分の部下っていう設定で。

ツ:ほう

ボ:店に入ると、受付の女の子が
「おはようございまーす。今日は遅いんですね」って、
「そうなんだよ。午前中得意先に行って、そのままお昼一緒に食べてきてさぁ」つって
タイムカード押して入店ですよ

ツ:会社っぽいね

ボ:席に座ると内線電話がついてて、
「あーお疲れ様、進藤ちゃんいる~?」
つって、接客する部下を指名したりして

ツ:指名できるんだ!

ボ:そしたら進藤がやってきて
『お疲れ様です。どうされました?』
「アイスコーヒーを一つ持ってきてくれるか」

ツ:まあ、カフェだからね

ボ:「あとな、ちょっと調べものをお願いしたいんだ。
インバウンド関連の最新ニュースをまとめておいてほしいんだ。
15時半にここを出るから、15時ごろにはほしいかな」
『承知しました』って
簡単な調べものとか、資料作成をやってくれるわけですよ。

ツ:会社っていう設定だからね!画期的だね

ボ:「そういえば、進藤ちゃんタバコは吸うの?」
『あ、はい』
「じゃあ、喫煙所ですこし話そうか」

ツ:設定細かいね~喫煙所まであるんだ

ボ:「今いくつだっけ?」
『22歳です。』
「そうか~、今年大学卒業なんだね。」
ここの店員さんは、就活中の大学生とか、
第二新卒の若者なんですよ

ツ:店員はバイトで仕事を手伝いながら、
社会人と関われるんだね

ボ:「どこの大学?」
『凹凸大学のほうを…』
「ほんと!?わたしもね凹凸大出身なんだよ」
『本当ですか!奇遇ですね』

ツ:喫煙所での会話でも人となりがわかっていくわけだ

ボ:「採用は決まったの?」
『ええ一応、商社のほうに。
実は今日がこのカフェへの最終出社日なんですよ』
「そうか!おめでとう~。何かお祝いしなきゃな、よし今夜飲みに行こう!」

ツ:意気投合して、飲みニケーションだね

ボ:『ありがたいんですけど、
【社長】にばれると怒られますから』つって
喫煙所のドアのところで、店長がじっと監視してるんですよ。

ツ:社長って呼んでるのかよ、徹底してんな

ボ:んで喫煙所を出て、コーヒー飲みながらテレワークですよ。
月額支払えば、Wi-Fiも、プリンターも備品使い放題。

ツ:ほんとに会社みたいだな。

ボ:そしたらですよ、カフェの奥のほうから怒鳴り声ですよ

ツ:怒鳴り声?

ボ:「馬鹿野郎!なんでこんなこともできねえんだ!」って
客が、店員の部下を怒鳴り散らしてるんですよ。
その客は、自分が若い時にそういう教育を受けてきたわけだよね

ツ:本人にとっては当たり前の接し方なわけだ。

ボ:店員も怒られ慣れてないから、ずっと俯いちゃって
「こんなことならな、セガレに頼んだほうがマシだ!」とか言っちゃって

ツ:またずいぶんなこと言うね

ボ:そしたら、後ろから社長がやってきて客に
『人事異動』って紙を渡すわけ。
中身みたら、1年間出禁って書いてあんだよ。
さっきまで怒鳴ってた客も何にも言えなくなっちゃって。

ツ:時代も反映してるな~

ボ:それを尻目に作業して、15時ですよ。
進藤ちゃんの資料はもう、ばっちりなんですよ。

ツ:ありがたいね、優秀なんだな進藤ちゃん

ボ:「いやあ、ありがとう進藤ちゃん。これ、受け取って」
何かなと思ったら、自分の名刺に携帯番号が書いてあって
「これから先、仕事で大変なことが山ほどあるけど、
もしつらい時は、電話をくれよ」

ツ:お客さんはちょっと寂しいんだね

ボ:帰ろうとし時に後ろから
『あの!』
振り返ると
『おれ、お客さまみたいに優しく、熱く教えてくれる
そんな、お客様と一緒に働きたいです!』
「進藤ちゃん・・・。部長って呼んでくれないか」
『ぶ、部長・・・』

ツ:なんでラブストーリーみたいになってんだよ!

ボ:後ろのほうで、社長が拍手しながら近寄ってきて
『進藤、お前はこの【部カフェ】立ち上げ当初からよくやってくれた。
晴れて卒業だな。
お客さん、進藤のことよろしく頼みますよ。
なんかあったら、私が容赦しませんよ』

ツ:だんだん引き込まれてる自分がいる。

ボ:お客さんも「はい!」って。
で、進藤はもともとの内定を蹴って、
そっちに入社するわけ。

ツ:すごい情熱をもって入社するわけだ。

ボ:でも、入社したら全然会社に出ないで
リモートで仕事しだしちゃって。

ツ:嘘だろ!あんなに熱いやり取りがあったのに!

ボ:やっとのことで開いた入社歓迎のリモート飲み会でも
「あれ?電波が悪いですね?もしもーし!」つって、退出して
やっぱり現代の若者なわけですよ

ツ:なんなんだよ、この悲しい結末は!

ボ:この寂しさを癒すために、管理職の人はまた部カフェに行くんですよ。

ツ:エンドレスだよ!いい加減にしろ!

二人:どうもありがとうございましたー。

Future TOHOKUとは

新型コロナウイルスの感染拡大を経験した私たちが、10年後の東北にひろげていきたい日常のしあわせを、より前向きに描き、つくる、シンク&アクトプロジェクトです。
「距離観【きょりかん】~再計測する生活者~」というテーマのもと、今後実現・定着するかもしれない新しい営みを、
7つのテーマ(食生活 / 働き方 / 住居 / 趣味・学習 / 車・トラフィック / 観光・祭り / 健康生活)に分類し、希望的楽観により描きます。
日本や世界があこがれる「東北らしい、あったらいいな」な生活シーンの数々。皆さんの再計測や新しい営みのきっかけになるレポートや物語を定期的に掲載してまいります。

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writer:白田涼太