【ストーリー】デリばあちゃん・デリじいちゃん

2020.09.24

架空の漫才コンビ「みちのく二人旅」が未来のケータリングサービスを語ります。

ツッコミ→ツ ボケ→ボ

ツ:どうもー、「みちのく二人旅」です

ボ:よろしくお願いいたします〜

ツ:まあ大学の同期2人でコンビ組んでますけども

ボ:今でこそお互いギスギスしちゃってますけどね、

ツ:まあ、ギスギスっていうか、適度な距離感でね

ボ:学生のときとか仲良かったんですよ

ツ:確かにね

ボ:一緒にカラオケ行ってデュエットしたりね。

ツ:旅行に一緒に行ったりね

ボ:その夜にコンビ組んだんですよ。
二人で同じ部屋に寝てて、
僕が「なあ、今、好きなボケいるの・・・?」

ツ:恋愛のトーンかよ

ボ:そしたらコイツ、今みたいに素っ気なくないですよ
「そうそうそう、夜空見上げて『月がキレイですね』。
お前のボケが世界一、ってバカ!」って全力で
汗かきながらノリツッコミしてくれたのに・・・

ツ:やったことねえよ!

ボ:今思えば、あれがプロポーズだったんですよね

ツ:おまえ、拡大解釈うまいな。

ボ:デビューしたての頃とかは、
芸人が10人くらいいる楽屋で二人でイチャイチャしてさあ。
同じ楽屋にいた都知事に「密です」って言われちゃって・・・

ツ:なんで芸人の中にいるんだよ、東京都知事がよ!
大体イチャイチャしたことないし、
8割お前の妄想じゃねえか!
適度な距離でいよう、これまで通り!

ボ:ソーシャルディスタンスね。

ツ:それにしてもね、外出自粛で生活の中で
いろんな変化あったでしょう?
中でもね、「食生活」が変わったって人、
結構いるんですよ

ボ:確かに

ツ:何より、外食とか飲み会とかできないから、
自炊する人が結構増えて。
ネットとかにいろんなレシピがあるから
それでプロ顔負けの料理が誰でも作れちゃうんですよ

ボ:私もね、作るようになりました

ツ:ほんと?

ボ:料理するのが楽しくてね、
普段食べない朝も料理して

ツ:いいね、朝ごはん。
変わるもんだねえ

ボ:作るからにはね、
器とか盛り付けにもこだわって

ツ:いいね、見た目もこだわって

ボ:袋から開けて、牛乳注いで  

ツ:コーンフレークだろ!盛り付けも何もないだろ

ボ:スマホで写真撮ってると段々ふやけてきちゃって…

ツ:いいよ細かい話は!
でもね、自炊ばっかりしてると、
やっぱり外食したくなるんですよ。
行きつけだった店の味が恋しくなったり

ボ:元々デリバリーとかあったけど、
運んでる間にちょっと冷めちゃうじゃない?
で、コロナ禍以降、飲食店がお客さんの家に
料理人を派遣するサービスとかも普及してきて。

ツ:家で出来立ての料理を提供してくれるんですよね

ボ:【デリシェフ】ってね

ツ:そうそう、俺も利用したことありますよ

ボ:さらに今では、食材の美味しい食べ方を知り尽くした
生産者のおばちゃんやおじちゃんが
シェフと一緒にやってくる
【デリばあちゃん】【デリじいちゃん】
が人気なんだとか

ツ:それは知らなかった!

ボ:農家とか漁師の人もシェフと一緒に家に来て、
「オール東北」のおもてなしをしてくれる。

ツ:そりゃよさそうだ。で、どうやって頼むの?

ボ:店に予約の電話を入れるんですよ
「すみません、今週土曜日、彼女にプロポーズしたいんで
うちにシェフの派遣をお願いしたいんです」

ツ:なるほどね、特別な日だ

ボ:『かしこまりました。シェフのご指名は?』

ツ:おお、シェフを指名して

ボ:「(照れながら)はじめてなので、
あの・・・性格重視で」

ツ:なんで照れてんだよ

ボ:『緊張なさらないで大丈夫ですよ
では、当店のNo.1を派遣いたします』って、
きたる土曜日ですよ。
”ピンポーン!”
ドア開けると、キザな奴が立ってて
『ご指名ありがとうございます…
レストラン・ライシーボーイズNo.1の牛若丸です⭐︎』

ツ:強烈なのが来たな!

ボ:背中には調理器具とか積んだリュック背負って
重さでフラフラになっちゃって

ツ:カッコ悪りぃな!

ボ:”ピンポーン!”

ツ:また誰かきたよ

ボ:ドア開けると、おばちゃんが
野菜の入った袋をもって立ってて
「おばんです~。タカハシ農園から新鮮な野菜持ってきましたー」

ツ:おお、これが【デリばあちゃん】ですね

ボ:“ピンポーン!”
ドア開けると今度は漁師さん。
「八戸で今朝捕れたイカ持ってきました」って
【デリじいちゃん】がクーラーボックスに
新鮮なイカとか魚をいっぱい入れて
持ってくるんですよ

ツ:いいねいいね。
新鮮な食材を届けてくれるんだ

ボ:シェフは食材受け取ったら手際がいい。
もう、かなり手際よく料理進めていく。

ツ:やっぱりNo.1シェフなんだね

ボ:で、男のほうはプロポーズ控えてるから
そわそわしちゃって。
「今日は決めるぞ!」って思ってますから

ツ:やっぱ緊張するよね

ボ:そしたら横で漁師さんが酒飲みながら
「おめえ、今日プロポーズすんだってな?」って耳打ちしてきて

ツ:なんで勝手に酒飲んでんだよ!

ボ:彼女の方見たら、
農家のおばちゃんと談笑してるんだよ
「あんた~、めんこいごどや~、どさすんでんなや?」
おばちゃんの東北訛りきつくて、
彼女ぽかーんとしてて

ツ:親戚の家みたいになってるよ

ボ:ふと見渡せば、東北各地の生産者さんたち
10人ぐらいで盛り上がってて

ツ:そんなに来たのかよ!

ボ:自分の家なのに、
他人の家みたいで落ち着かなくなって
ある意味「外食」みたいだなって

ツ:いいよ!そういうのは

ボ:でさ、彼女は東京出身だから、
訛りが通じないのもそうだけど
あまり東北のことを知らないわけ。
やっぱり自分の地元を
食べ物から好きになってもらいたいじゃない?
だからこその東北食材のフルコースですよ

ツ:なるほど、もう最高のおもてなしだ

ボ:お酒ももちろん、東北の地酒。
weddingって書いているおちょこなんか用意して

ツ:匂わせ過ぎだろプロポーズを

ボ:んでシェフが酒を出すとき
『あちらのお客様からです⭐︎』って言って
指したほうを見たら、
農家のおばちゃんがウインクしてんだよ

ツ:なんでおばちゃんが口説こうとしてんだよ。

ボ:そして肝心な料理ですよ。
『こちら、おばちゃんのスペシャルレシピで作った、
朝どれ野菜の【だし】です☆』

ツ:山形の郷土料理だ。
ご飯にかけるとおいしいんだよね。

ボ:手際いいからどんどん出てくる。
『こちら、いぶりがっこと豆腐の和え物☆』

ツ:おっ、それもうまそうじゃん!

ボ:『福島名物【いかにんじん】☆』

ツ:いいけど、なんで小鉢のメニューが続くんだよ!
もっと、海鮮のお造りとか、ブランド牛とかあるだろ!

ボ:まぁまぁ。ここからがメインディッシュ。

ツ:ちゃんとあるのね。で、何が出てくるの?

ボ:これはすごいよ。大間のマグロの解体ショー。

ツ:匂いが充満するだろ!
ただでさえ10人以上いる部屋で。

ボ:さすがに彼女も魚の匂い気にしだして

ツ:あたりまえだろ

ボ:そしたら農家のおばちゃんが
『そんなときにはね、濡れた新聞紙を部屋に干すと・・・」
「ほんとだ!匂いが消えた!」

ツ:消えるかー!
朝刊1週間分でも足りねえよ

ボ:そしたら彼女が
「東北の人って、あったかくてイイね」って言って

ツ:今のくだりで思ったの?!彼女も独特だな。
そりゃあ二人お似合いだわ。

ボ:そんで寿司や刺身やら、
マグロ1頭すっかり堪能しちゃって
最後にデザートが出てくるんだけど
ここで粋なサプライズですよ

ツ:サプライズ?

ボ:シェフがデザートにケーキ持ってくる。

ツ:ほう

ボ:ろうそくに火がついてて。
そしたら突然家の電気が消えるんですよ。
ここで、シェフと生産者による、フラッシュモブ。

ツ:フラッシュモブ!?
遊園地とかで急に周りの客が踊りだすやつ?

ボ:おばちゃんとかもハッスルして踊っちゃって。

ツ:料理に集中しろ!料理に!

ボ:カップルは暗闇の中キョトンとしちゃって

ツ:そりゃそうだよ!
ろうそくの灯りだけで突然踊り出すって、
どこの尖った劇団だよ!

ボ:ひとしきり踊ったら電気がついてシェフが
『左手、見てごらん、お二人さん⭐︎』
「え・・・?」ってみて見たら、
二人の左手の薬指に指輪がついてるんだよ

ツ:もはやシェフというよりマジシャン!

ボ:「僕と結婚してください」
「・・・はい、よろしくお願いします」

ツ:おお、めでたく結ばれたんだんね

ボ:そしたらカップル二人がいい感じになって
みんなの目の前でイチャイチャしだして。
それを見てたキザなシェフが言うんですよ

ツ:なんて?

ボ:『お二人さん、密ですよ⭐︎』

ツ:もういいよ。

二人:どうもありがとうございましたー。

Future TOHOKUとは

新型コロナウイルスの感染拡大を経験した私たちが、10年後の東北にひろげていきたい日常のしあわせを、より前向きに描き、つくる、シンク&アクトプロジェクトです。
「距離観【きょりかん】~再計測する生活者~」というテーマのもと、今後実現・定着するかもしれない新しい営みを、
7つのテーマ(食生活 / 働き方 / 住居 / 趣味・学習 / 車・トラフィック / 観光・祭り / 健康生活)に分類し、希望的楽観により描きます。
日本や世界があこがれる「東北らしい、あったらいいな」な生活シーンの数々。皆さんの再計測や新しい営みのきっかけになるレポートや物語を定期的に掲載してまいります。

Future TOHOKU

writer: 白田涼太