【ストーリー】一次産業アンチエイジング

2020.07.27

架空の漫才コンビ「みちのく二人旅」が未来の一次産業を語ります。

ツッコミ→ツ ボケ→ボ

ツ: どうもー、「みちのく二人旅」です

ボ: よろしくお願いいたします〜

ツ: 東北人二人で漫才やってますけどもね
僕が仙台に住んでまして

ボ: 僕が山形に住んでて

ツ: 仙山線で移動してネタ合わせしてますけどもね

ボ: ものの1時間で着いちゃいますから

ツ: 今日はお客さんで一杯ですね

ボ: ありがたいですねー
ちゃんと2席分空けて座ってますね

ツ: ソーシャルディスタンスの時代ですからね

ボ: 僕らも、こんなアクリル板で仕切られちゃってますけどね

ツ: なんだかやりにくいよね。

ボ: 僕はずっと前から彼とは距離置いてましたからね

ツ: どういうことだよ!

ボ: こいつと顔合わせたくなくて山形住んでますからね

ツ: そんな理由だったのかよ!

ボ: でも今リモートでネタ合わせできるから最悪ですよ。

ツ: 最悪ってなんだよ!いいんだよ、俺らの仲の話は!
まあ、先日緊急事態宣言が解除されまして。

ボ: されましたね。

ツ: やっぱり、一人ひとりが気を付けて生活した結果、解除になったわけですけども

ボ: でもまだ気は抜けないですよね。

ツ: まだ当面は、今回の自粛期間の暮らし方が残っていくと思うんですよ。

ボ: 確かに。

ツ: 解除されたけど当面の間、休日は家で過ごす、とかね。とくに自粛期間の時って在宅時間が増えたじゃないですか

ボ: 増えましたね

ツ: 外出控えてると暇なんですよね

ボ: 最初の頃はね、映画みたり自炊したりして時間潰せたんですけどね。だんだん飽きてくるんですよ

ツ: ずっと家の中だとね、景色が一緒だから

ボ: 飲み屋さんにも行けなくて話し相手もいないもんだから寂しいんですよね。かといってリモート飲み会だって、頻繁にやると疲れちゃうじゃない

ツ: 確かにね、毎日やって疲れてる人もいますから

ボ: だから鉢植え買って花を育ててたんですよ。毎日花に向かって話しかけて

ツ:なかなかだな〜。植物相手に話するんだ?

ボ: 一日一回必ず水をあげながら話しかけるんですよ。「立派に育てよ〜」とか言って

ツ: なるほどね

ボ: そうやってると不思議なもんで、すくすく育つんですよしまいには立派な花が咲いて

ツ: やっぱり話しかけると変わるのかな?

ボ: 「立派な大人になったな〜」って
酒飲みながら涙ぐんで話しかけて

ツ: 成人した息子かよ!

ボ: 酒の勢いで「いや実は、好きな人がいてさ〜告白しようか迷ってるんだよね〜」とか話しかけたんだよ。そしたら花が『お前はそうやってグズだからタイミングを逃すんだ』って

ツ: 花と会話しちゃったよ!

ボ: そしたら花が『恋占いしてやる』っていうから、花びら一枚一枚「好き、嫌い、好き、嫌い・・・」

ツ: ちぎるなー!せっかくの話し相手を

ボ: 「・・・嫌い」

ツ: しかも嫌いなのかよ

ボ: 結局、ひとりでヤケ酒でしたよ

ツ: 何だったんだよ、ここまでの時間!

ボ: でも空き時間を活かして何かを育てるってのは、案外できるもんですよ。例えば花じゃなくて、野菜とか。

ツ: ああ、家庭菜園とかね。自粛期間以降、結構普及しましたよね。

ボ: これからは違いますよ。みんな自分で畑をもって、農業を副業にするんですよ。

ツ: 副業で?

ボ: 余った時間で自炊する人も増えたけど、これからは食料から本格的に自給する人も出てくるんですよ。

ツ: そこから始めちゃうんだ

ボ: 例えば、元々サラリーマンだった人が午前中は畑仕事、午後から会社の仕事、みたいに2つの顔を持って。それをだんだん会社が認めるようになって

ツ: 昔より時間に融通がきくから、できるかもしれないですよね

ボ: その分、時間管理はしっかりしないといけないですよ。朝おきて、農園に行くんですよ。

ツ: 東北は郊外とか山間部に多いですからね。

ボ: ビニールハウスの入り口で「ピッ」てタイムカード押して仕事開始ですよ

ツ: 時間管理するわけだね、しっかりと

ボ: 収穫とか出荷が近い時期だと。納品先とのやり取りとか忙しいんですよ。そうなると、農園とか畑でパソコン開いちゃったりして

ツ: 畑でパソコンってなんか不思議な光景だね

ボ: 昼過ぎになると、ちゃんと切り替えて会社の仕事ですよ。

ツ: メリハリ付けてね。

ボ: 乗ってきた軽トラに戻って、お得意先とリモート会議ですよ

ツ: やっぱり今どこからでも会議に参加できますから

ボ: 「お世話様です〜。」
『どうも〜、収穫時期で忙しいんじゃないですか?』
「おかげさまで。
そちらもFacebook拝見しましたけれど
漁師の兼業、充実してそうですね?」って
お得意先の人は、漁師と兼業しちゃったりして

ツ: 農業だけじゃなく、東北は水産事業者も多いですからね

ボ: 『いや~漁のために毎朝4時おきですよ〜』つって

ツ: 漁師だから、朝早いよね

ボ: 『そういえばいつもと部屋の背景違いますね?』
「すみません、農園の駐車場から参加してます〜」

ツ: 軽トラ車内だからね

ボ: 『私も今、漁船から参加してます〜』

ツ: 真っ只中かよ!

ボ: 『やっぱり船の上は揺れますねおえええええええ』

ツ: 酔っちゃったよ!漁師向いてねえな、そいつ!

ボ: で、今みたいに東北は農業とか水産とかの一次産業多いでしょ?若者とか働き盛りの世代で、副業したい、スローライフな生活したいなんて人がそのうち東北にいっぱい集まるんですよ

ツ: 日本各地から?

ボ: そうなると、担い手不足とか一気に解消して
農村や漁村が若返るワケですよ

ツ: いいね!より活気が出てくるよね

ボ: 農村の人たちの話題も変わりますよ。「なあ、見でけれ。おらいのコンバイン。左ハンドル。」

ツ: 愛車自慢かよ!

ボ: 「しかも、高音質スピーカーにウーハー付き。」つって
大音量でユーロビート流したり

ツ: また畑に不釣り合いな

ボ: 『ほだな、ちゃっこいの〜。
見てみ?おらいのコンバイン、オープンカー。』

ツ: 大体屋根ないだろ、コンバインは!珍しくねえよ

ボ: 『しかも、馬力が違う、畑ば往復する速度が全然違げぇのよ』
若い世代が農業に携わるようになってからいろんな企業が思い切って農業に新規参入してたりして

ツ: 思い切りすぎだよ!

ボ: 小競り合いしてたら、向こうのほうから、会社員の収入で羽振りいいやつが「君たち、何を騒いでるんだい?」って、リムジンのコンバインに乗ってくるんだよ

ツ: そいつ何なんだよ!

ボ: 「見てごらん、これ。イタリア製の手ぬぐい」つって
これ見よがしに汗拭きだして

ツ: また新規参入じゃねえか

ボ: そしたら周りの連中も「いいなー」とかいって
自分の手ぬぐい噛んで「キーッ」ってなっちゃったりして

ツ: それはカッコいいのか?イタリア製の手ぬぐいって

ボ: 助手席に女性を乗せてカッコつけてきたわりに、リムジンは車体長いから、往復するときに切り返せなくなって

ツ: かっこ悪りぃな!

ボ: でもね、これまでより若い世代で、元々都会とかでビジネスやってた人とかが農業や漁業やるから、いろいろ工夫して作物が売れたり、AIで効率化したりして東北の一次産業が一気に発展するんですよ

ツ: そう考えると、東北の未来は明るいね

ボ: そんな中、これまで農業やってたシニアの人たちも「おらだも負けてらんねえ」って立ち上がるんですよ

ツ: お年寄りも触発されて、いい刺激だね!

ボ: Youtuberなんか始めちゃったりして

ツ: シニアYoutuber!?

ボ: これは画期的ですよ。Youtubeって主に若い世代の人が発信しますけどもう、お年寄りならではの目線でチャンネル開設するんですよ

ツ: たとえばどんな?

ボ: おばあちゃんが悩みに答える「知恵袋チャンネル」

ツ: 確かに、これはありそうだね

ボ: 視聴者からメールが届くんですよ。「最近、季節柄、喉が痛くて困ってます」
『そんな時はね、梅干しを弱火で焼いて、お茶を注いで飲むと良くなるのよ』

ツ: ほんとに役立つ情報を教えてくれるんだね

ボ: 「スマホのバッテリーの減りが早いんです」
『そんな時にはね、部屋に湿った新聞紙を干すと…』

ツ: 携帯ショップ行けよ!それ部屋のニオイを取るやつだろ

ボ: 他にも「孫が可愛くて仕方ないチャンネル」

ツ: 何なんだよそれは!

ボ: ずっと縁側に座って、孫の可愛さを語り続けるんだよ

ツ: 家でやれよ!わざわざ配信しなくていいだろ。農家のお年寄りなんだから、農業チャンネルとかあるだろ

ボ: 農業チャンネルもね、やっぱり段々人気出てくるんですよ。「どーもー!ジジキンでーす!」

ツ: おおYoutuberっぽいね、名前

ボ: 畑の土質とか、作物を育てるコツとか、「肥料を比べてみた」とか、楽しい農業の動画をどんどん上げてって、お年寄りだけじゃなく、老若男女のカリスマ的存在になって

ツ: すごい人気だね、おじいちゃん

ボ: そうこうしてるうちに、Youtuber同士のコラボ動画が始まっちゃって

ツ: コラボ動画?

ボ: 「どーもー!ジジキンでーす!今日はサバ漁師Youtuberサバエルさんのところにお邪魔してまーす!」

ツ: 漁師系のYoutuberだ。こっちもそれっぽい名前だね

ボ: 一次産業同士のコラボですよお互いの仕事を体験したりしてね。農家が漁師を体験して、漁師が農業体験して

ツ: 実際ありそうですよね

ボ: でもあまりに人気が出過ぎちゃうと、初心を忘れちゃうんですよ。動画の面白さの方優先しちゃって、クーラーケースの中で寝てみたり、ドッキリでとなりの畑の大根だまって盗んだり

ツ: バカッター動画じゃねえか!いい大人がなにやってんだよ!

ボ: そしたら、炎上しちゃって、ワイドショーとかでも、「シニアYoutuber、モラルを問う」なんて特集されて

ツ: 大ごとになっちゃったよ

ボ: 後で謝罪動画を出すんですよ。
「皆様に不快な思いをさせてしまい
誠に、誠に、申し訳ございませんでした。
若者に負けたくない思いで始めた動画で、
お隣さんの大根を盗んでしまい…。
二つの意味で、【畑違い】でした。」

ツ:いい加減にしろ。

二人:どうもありがとうございましたー。

Future TOHOKUとは

新型コロナウイルスの感染拡大を経験した私たちが、10年後の東北にひろげていきたい日常のしあわせを、より前向きに描き、つくる、シンク&アクトプロジェクトです。
「距離観【きょりかん】~再計測する生活者~」というテーマのもと、今後実現・定着するかもしれない新しい営みを、
7つのテーマ(食生活 / 働き方 / 住居 / 趣味・学習 / 車・トラフィック / 観光・祭り / 健康生活)に分類し、希望的楽観により描きます。
日本や世界があこがれる「東北らしい、あったらいいな」な生活シーンの数々。皆さんの再計測や新しい営みのきっかけになるレポートや物語を定期的に掲載してまいります。

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