【ストーリー】HOLO-SANSA

2020.07.27

今日は、さんさ祭り最終日の夜。
私は、盛岡の実家に向けてクルマを走らせていた。
10年前、コロナで祭りが開催できなかったことをきっかけに、
ホログラムで祭り体験を共有する動きが
盛んになりつつあるのだ。

家につくと母から、
待ってましたと言わんばかりに、
「はやく、ノリコとつないでちょうだい」
とのリクエストが入った。

台湾に住む姉とオンラインで映像を繋ぐと、
私の隣に6歳の甥っ子のホログラムが現れた。
母の楽しみはこれである。

祭りばやしが家の中に響きはじめると、
白地に紺の模様が入った衣装をまとったホログラムの甥が
華麗に太鼓を鳴らし始める。
さすが、元・ミスさんさの称号を持つ姉に
鍛え上げられただけのことはある。

私も負けじと踊ったが、
終わるころにはすっかりへとへとになってしまった。
甥はまだまだ踊れる!と余裕綽々。

リアルの会場と熱量の差はあるものの、
こうして遠く離れていても
同じ時間を共有できるのは格別だ。
甥は実際に盛岡を訪れたことはないが、
このリズムをすっかり習得している。
いつか、盛岡に来た時に
この場所をホームのように感じてもらえるといいな。

Future TOHOKUとは

新型コロナウイルスの感染拡大を経験した私たちが、10年後の東北にひろげていきたい日常のしあわせを、より前向きに描き、つくる、シンク&アクトプロジェクトです。
「距離観【きょりかん】~再計測する生活者~」というテーマのもと、今後実現・定着するかもしれない新しい営みを、
7つのテーマ(食生活 / 働き方 / 住居 / 趣味・学習 / 車・トラフィック / 観光・祭り / 健康生活)に分類し、希望的楽観により描きます。
日本や世界があこがれる「東北らしい、あったらいいな」な生活シーンの数々。皆さんの再計測や新しい営みのきっかけになるレポートや物語を定期的に掲載してまいります。

Future TOHOKU

writer:武田陽介、菅原愛恵