【ストーリー】おうちねぶた

2020.07.27

8月初旬のこの季節になると、
高校を卒業するまで大きなねぶたを追いかけ、
家族や友人と汗を流していたことを思い出す。
地元を離れ、子どもが産まれてからというもの、
ねぶた祭には1度も行けていない。

その代わりといっては何だが、
いまは、あたらしいねぶたの楽しみ方にハマっている。
「おうちねぶた」。
簡単に言えば、家庭用のミニチュアねぶただ。

今回注文したのは新進気鋭の女性ねぶた師のもの。
半年以上前に予約をしたが、
もうすぐ満枠になりかけていた。

ベランダにテーブルと椅子を置き、ねぶたを吊るす。
スイッチを入れると、
間接照明のように暖かい光に包まれる。
じんわりと汗ばむ暑さの中、
キンキンに冷えた青森の地酒を飲みながら
遠く離れた両親、兄弟、そして先祖のことを想う。
SNSのタイムラインにも、
ポツリポツリと赤い光が灯っている。

ある年、ねぶた祭りが開催できないことがあって、
祭りとは一体何なのか、を考えたことがある。
人それぞれで答えは違うと思うけれど、
自分にとっての祭りとは、
今見えていない誰かとのコミュニケーション。
誰かを想い、その健康を祈る。
そんな大切な時間であることは、
今も昔も変わらないのではないだろうか。

Future TOHOKUとは

新型コロナウイルスの感染拡大を経験した私たちが、10年後の東北にひろげていきたい日常のしあわせを、より前向きに描き、つくる、シンク&アクトプロジェクトです。
「距離観【きょりかん】~再計測する生活者~」というテーマのもと、今後実現・定着するかもしれない新しい営みを、
7つのテーマ(食生活 / 働き方 / 住居 / 趣味・学習 / 車・トラフィック / 観光・祭り / 健康生活)に分類し、希望的楽観により描きます。
日本や世界があこがれる「東北らしい、あったらいいな」な生活シーンの数々。皆さんの再計測や新しい営みのきっかけになるレポートや物語を定期的に掲載してまいります。

Future TOHOKU

writer:武田陽介、菅原愛恵