【ストーリー】マスクがパスポート

2020.07.27

会津木綿の織物職人として、
ずっと着物や手ぬぐいをつくってきた私が、
年間数千枚のマスクを縫うことになるとは
思ってもみなかった。

マスクと言えば白か水色が主流で、
柄物はほとんどなかったけれど、
コロナの影響で腕時計をする感覚で、
みんなが一年中マスクをつけるようになった。
一枚3万円もする高級ブランドのマスクも売れていると聞く。
はじめは地元の人が買ってくれていたわたしのマスクは、
いまや、海外からも注文が来るようになった。

マスクのおかげで、
織物自体に再び注目が集まり、
来月は会津木綿の展示会をパリで開催することになった。
まさか、ソーシャルディスタンスが必要なこの世界で、
遠い国との距離が縮まるとは不思議なものだ。

Future TOHOKUとは

新型コロナウイルスの感染拡大を経験した私たちが、10年後の東北にひろげていきたい日常のしあわせを、より前向きに描き、つくる、シンク&アクトプロジェクトです。
「距離観【きょりかん】~再計測する生活者~」というテーマのもと、今後実現・定着するかもしれない新しい営みを、
7つのテーマ(食生活 / 働き方 / 住居 / 趣味・学習 / 車・トラフィック / 観光・祭り / 健康生活)に分類し、希望的楽観により描きます。
日本や世界があこがれる「東北らしい、あったらいいな」な生活シーンの数々。皆さんの再計測や新しい営みのきっかけになるレポートや物語を定期的に掲載してまいります。

Future TOHOKU

writer:武田陽介